女子高校生の目線から東日本大震災と原発事故を描いた漫画「ある光」が昨夏、刊行された。描いたのは南海トラフ巨大地震で津波被害が想定される、和歌山県串本町出身の一人の男性だ。
漫画は、福島県いわき市の沿岸部、薄磯地区をモデルにした架空の地域を設定し、主人公はこの地区に住む高校3年生佳文(かや)。物語は東日本大震災が発生する1年前から始まる。将来の目標が定まらない佳文が、かつてバンドを組んだ親友から励まされ、音楽の道を志して進んでいく姿や、転校生に抱く恋心が描かれている。
2011年3月11日。この日、佳文は高校の卒業式を迎えた。直後に揺れと津波に襲われる。津波で佳文は自宅を失い、さらに原発事故で放射能への不安を抱えながら避難所生活を送る。その後、震災前から決まっていた専門学校への進学のため上京。音楽を続け、震災で亡くなった人への思いをめぐらせながら、震災に向き合っていく姿を描いた。
描き始めたきっかけは灯台の光
作者は元和歌山県職員で、現在は日刊建設工業新聞社(東京)の記者、阪本繁紀さん(31)。生まれ育った同県串本町は本州最南端に位置し、南海トラフ巨大地震が発生すれば、数分で津波が襲うと想定されている。
当時、大学進学を控えて和歌…